第5回:法務・税務の基礎

皆様、こんにちは。本日は「起業の実務」というテーマで、会社設立の手続き、確定申告の基礎、各種保険の選び方、そして契約書の基本について学んでいきます。

会社設立の手続き

会社設立、特に株式会社の設立には、いくつかの重要なステップがあります。

ステップ株式会社合同会社
1. 基本情報の決定会社名、所在地、事業内容、発起人を決定会社名、所在地、事業内容、出資者を決定
2. 資本金の準備資本金を用意資本金を用意(金額の制限なし)
3. 印鑑の準備発起人の印鑑証明書を取得、会社印を作成代表社員の印鑑証明書を取得、会社印を作成
4. 定款の作成定款を作成定款を作成
5. 定款の認証公証人による定款の認証が必要公証人による定款の認証は不要
6. 出資金の払込資本金の払込を行い、払込証明書を取得出資金の払込を行う
7. 登記申請書類の作成必要書類を作成(設立登記申請書、定款、発起人同意書など)必要書類を作成(設立登記申請書、定款、代表社員就任承諾書など)
8. 登記申請法務局に登記申請を行う法務局に登記申請を行う
9. 登記完了登記完了後、登記事項証明書と印鑑カードを取得登記完了後、登記事項証明書と印鑑カードを取得
10. 設立後の手続き法人口座の開設、税務署等への各種届出法人口座の開設、税務署等への各種届出

注意点

株式会社は定款の認証が必要ですが、合同会社は不要です。
株式会社は発起人、合同会社は出資者という違いがあります。
両形態とも、登記申請は資本金払込後2週間以内に行う必要があります。
具体的な必要書類は会社形態によって異なる場合があるため、詳細は法務局に確認することをお勧めします。

個人事業主が開業する場合

個人事業主が開業する際には、開業届の提出が重要な手続きの一つです。開業届は、個人事業を開始したことを税務署に届け出る書類で、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。開業届の提出に関する主なポイントは以下の通りです

  1. 提出期限:事業開始日から1ヶ月以内に提出する必要があります。
  2. 提出先:納税地(通常は住所)を管轄する税務署に提出します。
  3. 提出方法
    • 税務署の窓口への持参
    • 郵送
    • e-Taxによる電子申請3
  4. 必要なもの
    • 作成済みの開業届
    • マイナンバーカード(またはマイナンバーがわかるもの)
    • 本人確認書類(マイナンバーカードがない場合)
  5. 記載事項
    • 氏名、生年月日、納税地
    • 個人番号(マイナンバー)
    • 職業、開業日
    • 屋号(任意)
    • 事業の概要
    • 青色申告の承認申請の有無
    • 消費税の課税事業者選択届出の有無
    • 給与等を支払う人数

開業届以外にも、個人事業主は以下の手続きが必要です

都道府県税事務所と市町村への「事業開始等申告書」の提出。
従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険と雇用保険)の加入手続き。
常時5人以上の従業員がいる場合は、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金への加入。

また、青色申告を希望する場合は、開業から2ヶ月以内(1月1日から15日に開業した人は3月15日まで)に「所得税青色申告承認申請書」を提出する必要があります。これらの手続きを適切に行うことで、個人事業主として正式に事業を開始することができます。

確定申告の基礎

確定申告は、個人事業主にとって重要な年次の手続きです。

確定申告の概要

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得金額とそれに対する所得税額を申告し、納税するための手続きです

確定申告が必要な場合

個人事業主や自営業者は、原則として確定申告が必要です。ただし、合計所得が48万円以下の場合は、確定申告は不要となります

確定申告の流れ

  1. 開業届の提出:事業を始める際に、税務署へ「個人事業の開業・廃業届出書」を提出します。
  2. 帳簿付けと集計:1年間の売上と経費を記録し、集計します。
  3. 確定申告書の作成:集計したデータをもとに、確定申告書を作成します。
  4. 確定申告書の提出:作成した確定申告書を、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に税務署へ提出します。

必要書類

確定申告には以下の書類が必要です。

  • 確定申告書
  • 収支内訳書または青色申告決算書
  • 各種控除証明書
  • 前年の確定申告書の控え(2年目以降)

青色申告を選択する場合は、「青色申告承認申請書」も提出する必要があります

各種保険の選び方

起業後、適切な保険に加入することでリスクを軽減できます。法人向けの保険選びには以下のポイントがあります。

1. 目的の明確化

自社が抱えるリスクを洗い出し、優先順位をつけ、保険加入の目的を明確にします

2. 事業計画との整合性

現在の業種や会社の状況だけでなく、今後の事業計画も考慮して保険を選びます

3. 柔軟性の確保

環境の変化に対応できる柔軟性のある保険を選ぶことが重要です

4. 包括的な補償か特定リスクの補償か

事業を包括的に補償する保険か、特定のリスクのみを手厚く補償する保険かを選択します

主な法人向け保険の種類

  1. 賠償責任を補償する保険
  2. 資産保全に関する損害保険

これらの中から、自社の状況に合わせて適切な保険を選択します。保険料は加入する保険や業種などにより大きく異なるため、具体的な相場を示すことは難しいです。専門家に相談することをおすすめします。

契約書の基本

契約書は事業を行う上で非常に重要な文書です。以下、契約書作成の基本的なポイントを解説します。

契約書の重要性

契約書は、取引の内容や条件を明確にし、後々のトラブルを防ぐために不可欠です。口頭での約束は曖昧になりがちですが、契約書があれば双方の権利と義務が明確になります。

契約書に含むべき基本的な要素

  1. 契約の当事者:契約を結ぶ両者の正式名称と住所
  2. 契約の目的:何のための契約かを明記
  3. 契約の内容:具体的な取引内容や条件
  4. 契約期間:契約の開始日と終了日
  5. 対価:商品やサービスの対価、支払い方法、支払い期日
  6. 責任の所在:不履行や損害が生じた場合の責任の所在
  7. 解約条件:契約を解除できる条件
  8. 守秘義務:機密情報の取り扱いに関する規定
  9. 紛争解決方法:トラブルが生じた場合の解決方法
  10. 署名欄:両者の署名または捺印欄

契約書作成時の注意点

  1. 明確な表現を使用:曖昧な表現は避け、具体的かつ明確な表現を心がけます。
  2. 法的要件の確認:業種によっては法律で定められた記載事項がある場合があるので確認が必要です。
  3. 専門家のチェック:重要な契約の場合は、弁護士など専門家のチェックを受けることをおすすめします。
  4. 両者の合意:契約内容について両者が十分に理解し、合意していることを確認します。
  5. 日付の記入:契約締結日を明記します。
  6. 複数部数の作成:通常、契約書は両者が1部ずつ保管するため、2部作成します。

契約書の保管

契約書は重要な文書ですので、安全な場所に保管し、必要に応じてすぐに参照できるようにしておくことが大切です。電子データとしても保存しておくと便利です。

まとめ

起業の実務には、会社設立の手続き、確定申告、保険の選択、契約書の作成など、多岐にわたる知識と準備が必要です。これらの基本を押さえた上で、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら進めていくことが重要です。会社設立の手続きは複雑ですが、一つ一つのステップを確実に進めることで、確実に目標に近づくことができます。確定申告は毎年の重要な業務ですので、日頃から適切な帳簿管理を心がけましょう。保険の選択は、自社のリスクを十分に分析した上で行うことが大切です。そして、契約書の作成は、ビジネスを円滑に進める上で非常に重要ですので、慎重に対応しましょう。これらの実務をしっかりと押さえることで、皆様の起業がより確実なものとなり、事業の成功につながることを心より願っております。